蓮の花

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2発の発砲音が響く。 胸と頭部を撃ち抜かれた美智雄さんが仰向けに倒れた。 「ぼーっとしてんじゃない」 「伊純さん!」 大男に腕を引っ張られて、到着したタクシーに放り込まれる。 何事もなかったようにタクシーは走り出して俺の家に向かう。いつもの運転手さんはこんな修羅場には慣れているのだろう。 伊純さんは手をふってマンションの中に戻っていった。 「料金はもらってますから早く部屋に隠れてください」 運転手さんに言われる。最後まで伊純さんの手際の良さに助けられながらふらふらと自分の部屋に急いだ。 情報を遮断してもすぐ耳に入ってくる。 紘一さんの時と同じだ。 俺を守るために伊純さんは逮捕されてもう会えない。 不思議と警察は俺のところに来なかった。伊純さんがどんな仕掛けをしたのかわからないが完璧主義な彼のことだから俺の将来を邪魔するものは排除するつもりだろう。 それが隔離された堀の中からでも。 これでよかったのだろうか。 俺の選んだ道は間違っていないか。 悩んだ時『これが紘一さんだったらどうするだろう』と心に問いかけてきた。 彼ならこう言うだろう、そう思いながら動いてきた。 伊純さんだったら『つったってないでシャワー浴びてこい』って言うんだろうな。 そう思う。
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