未成年

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怖い所に連れていかれると思って怯えていたら、小綺麗なワインバーに入っていって俺は拍子抜けした。 「今夜だけだぞ未成年」 紘一さんがにやっと笑ってカウンターに座る。 「どうせ何も食ってないだろ。育ち盛りだからたくさんどうぞ」 「子ども扱いムカつくんですけど」 精一杯の俺の反抗を無視してカウンターの向こうにいるマスターに何か注文している。 「ガキが背伸びして大人の世界を覗きたいのはわかるよ。俺もそうだったし。だから見て納得しな」 ふてくされてる間に俺の前に大盛りのパスタと小さなドリアが置かれて、ワイングラスが用意されていた。 「…え?」 「先に食べてから飲んでみな。今日はみんな目をつぶるから、とりあえず胃に何か入れろ」 紘一さんの前にはチーズの盛り合わせと生ハム、そして何も入っていないワイングラス。 この店の雰囲気に合っていて大人の雰囲気に圧倒された。 俺が食べ終わるのを待ってくれて 「どれ飲んでみたい?」 メニューを開いて、目の前に飾ってあるワインボトルを指差す。 お酒の知識なんかまったくない俺には選べない。 よくわからなくて首をかしげて眺めている俺の頭をなでながら 「味見程度にしておけよ」 そう言って白ワインを選んでくれた。
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