未成年

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「眺めてたら蒸発するよ」 くすくす笑いながら紘一さんは俺の様子を見ている。 「飲み方がわかんない」 「気取らず普通に飲めばいいさ」 家でこっそりビールくらいは飲んだことはあるけど、こんな雰囲気のあるお店でワインはハードルが高い、そう思いながら恐る恐る一口飲んでみた。 「どう?」 「…おいしい」 初めて飲んだワインは甘口で飲みやすかった。 「それはよかった」 「ここよく来るの?」 「俺の友人がやってる店。だから聡くんの大人デビューは秘密にしてくれるように頼んだよ。停学くらいたくないだろ?」 その言葉に一瞬で現実に戻って不愉快な気分になった。 よくわからない基準で法律や校則で俺たちを縛る。 「そういう世の中の理不尽な気分をこういう所で落ち着かせるのさ。大人は」 俺の顔色を読んでもう1杯ついでくれた。 そんな人生つまんないな。 未来はもっとわくわくして楽しいものだと思っていたのに。 「煙草 吸わないの?」 「味がわからなくなるから吸わない」 でも絵になるだろうなあなんて考えながら少しずつ酔っていった。 「水飲んで。悪酔い防止に」 いつの間にか目の前に水が入った小さなグラスが置かれている。 表面が上のライトに反射してキラキラしている。それを見ていると余計に酔いがまわって気持ちよくなる気がした。 「酔ってそんな可愛い顔されたらイタズラしそうだ」 俺の意識がぼんやりする前に紘一さんがそんなことを言っていた気がした。
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