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炭小屋に着くと、あたしは下ろしてもらい中に入る。お父と男達が縛られて寝転がっていた、まだ気がついてないようだった。
「まだしばらくは、そのままにしておいてくれ」
「しばらくって」
「そうだな、夜明け、そう夜が明けるまで。それまでには片をつける」
小屋から出て山を登ろうとしたお奉行様を、あたしは追いかけてお礼を言った。
「夜明けまでに邪霊の親玉を退治してみせるからな」
そう言うと、お奉行様はまるで跳ぶように山道を駆け上がっていった。あたしはそれを見えなくなるまで拝みながら見送った。
それから夜明けまで、あたしは小屋の中でじっと待っていた。この夜のことは一生忘れないだろう。
夜明けまで起きているつもりだったが、やっぱり疲れていたらしい、いつの間にか寝てしまっていた。
朝を告げる鳥が鳴いている
それを聞いて目を覚ました
朝日が射している、夜明けだ、あたしは小屋から出た。
お奉行様は、姫様達はどうなっただろう、邪霊は退治できたのだろうか、あたしには分からなかった。
ただ、山の匂いがいつもより爽やかだったのはたしかだった。
ーー 了 ーー
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