エピローグ

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エピローグ

 ジャスパーが捕まってから数日後。  アパートにいた俺は新聞を広げながらコーヒーを飲んでいたのだが、ノック音が響いてため息をつく。 「またか……朝っぱらから、迷惑な客だな」  ぶつぶつと文句をこぼしながら玄関のドアを開けると、そこには「よっ」と手を挙げるグレンがいた。 「君は……何時だと思ってるんだ?」 「あー、朝の七時くらいか? 通勤前に寄るとなると、この時間になっちまうんだよ。悪いな、大目に見てくれって」  許可も得ずに人の部屋に上がるグレンに呆れる。グレンは勝手にキッチンに立って自分の分のコーヒーを入れると、俺の前に座った。 「探偵業はどうよ」 「どうってなんだ。別になにも変わらない。君こそ、今はなんの事件を担当してるんだ」 「最近は平和だからな。強盗を捕まえたり……」  グレンがそう言いかけたとき、またもやインターフォンが鳴った。グレンが自分の家のように「はーい」と言いながら出ると、ドアの前にはバードランド警部が立っている。 「オーセット、それからグレンもいるな。スコットランドヤードから、正式にオーセットに依頼をしたい。池から変死体が見つかった」  それを聞いた俺は頭痛に襲われながらコーヒーカップをテーブルに置き、グレンをじとりと睨む。 「平和なんじゃなかったのか?」 「つい数秒前まではな」  朝から何度目かわからないため息をついて、俺は腰を上げる。それからコートを羽織ってステッキを手に取り、玄関にいるグレンの隣に立った。 「もちろん、今回も俺と組むんだろ? 相棒」 「……! 相棒って、正面切って言われるのは初めてだな」  わかりやすく嬉しそうににやけているグレンの頭を、俺は照れ隠しに小突く。 「それで、組むのか組まないのか、どっちなんだ?」 「当然、組むに決まってんだろ、相棒」  俺たちは笑みを交わすと、先導するように歩くバードランド警部の背を追ってアパートを出る。頭上には事件に赴く俺たちを見守るように、澄みきった青空が広がっていた。 END           
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