サーカスが嫌いな男

7/9
前へ
/13ページ
次へ
 やがて森へ入るころ嵐が止み、長老の木霊の声が響いた。 「よくぞ心臓を持ち帰った」  森へ捧げるため、ライオンが心臓を土に埋めた。 「僕を殺して、一緒に埋めてください」  そう言ったクマの涙がその土に落ちた。  すると突然そこが光り、メリメリと凄まじい音が轟いて、天を衝くほどの大樹がたちまち生え伸びた。  その幹はどくどくと脈動し、心臓のように地下の水を天の頂へ還して、天からの光を地上へ運んだ。  森のものは皆、それを見上げていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加