石蹴りして遊ぼう ③

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石蹴りして遊ぼう ③

 実は、といきなり男の声が聞こえてきた。籠もった声。 「あの子は、先日亡くなっているんですよ」  その声は、私の耳元で囁かれる。  深い穴の底から聞こえるような声。 「な、何言ってるんだ⁉︎ 」反射的に私は叫んだ。 「一昨日前の事でした。あなたがあの部屋に来る前に、容態が急変してしまいましてね……。呆気無いものです。亡くなるまで、あなたの名前を呼んでいたそうですねぇ」  私の耳元で、男の声が囁くように聞こえる。まるで顔がすぐ横にまで迫っているかのように。 「まあ、ここで会えたからいいじゃないですか。会いたかったんでしょ?」  私はすぐ側の男の顔を見た。  違う。  男の瞳が深淵みたいに見えて、その奥から覗いている。  眼窩だ。眼球が無く、瞳だけが闇の中で小さな光となって、私を見ている気がした。  頭蓋骨が私を見ている。 「あなたもお疲れ様でした。一生治らない病気を抱えて大変だったでしょう? もう潮時なんです。休んで良いんですよ」  私は怖くなって取り乱した。 「い、一体何を言ってるんだ、君は! こんな、科学の発達した時代に! 」 「そんなのはね、昔も今も同じなんですよ。科学なんて関係無いんです」  男は溜息をつき、あの子達が遊んでいる方へ、骨だけの顎をしゃくった。  ……あの子がいない?  病衣姿のあの子の姿が無くなっていた。いくら砂埃の中でも、遊んでいる子供達の姿くらい分かる。間違いない。 「もう、邪魔だね、これ! 」男の子の声が聞こえた。  子供達の足元で何かが絡まっている。。  あの子の病衣だ。病衣が上下一揃い、砂まみれで落ちていた。それが子供達の脚で蹴り出されようとしている。  その中で蹴り出そうとしていたもの。  私は見たものを、一瞬疑った。()()()()()()()()。  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。  転がって私の元に来た。  コロコロコロコロ。  もう無い瞳が覗いた。  子供達は、石蹴り遊びを辞めた。こっちに近寄って来た。  にこやかに私に語りかける。 「それ拾ってよ」 「君も遊ぼうよ。一緒に石蹴って遊ぼうよ! 」  やっぱり瞳はない。代わりに暗い穴が私を見ていた。  私は、恐ろしくなって叫び声を上げた。声にならない叫び。  後ろに下がろうとした。動けない。何故だ⁉︎  子供達が、男が、目の前に迫って来る。  私はそこで気が遠くなってしまい……目の前が真っ暗になった。
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