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第二十六章 忠告
それから高校を卒業した先生は、専門学校を出た後で
働き出した代官山のお店に在籍していた先輩と
付き合うようになった。
その人が今日大迫を連れてきた奥井先生なのだそうだ。
「え、じゃああの先生もゲイなんですか?」
「先生はバイや。離婚したけど。」
「そうだったんですね。」
「ソウには内緒やで。」
「当然です。」
終わった話を蒸し返して揉めても困る。
アキヒトはしっかりと頷いた。
「でな」
と先生は続けた。
「こんな長年悩んだ挙句にゲイをオープンにした俺と
今まで普通の男女の付き合いしたしてこなかったお前とは
場数が違うねん。」
「はい。」
「だから一つだけ言っておく。
みんなに理解してもらおうと思うな。」
先生はそう言ってアキヒトを真っ直ぐに見た。
「理解されなくて、当たり前なんやから。
どうしても筋を通したい人にだけ話しておけばええ。
無駄に傷つくな。」
その言葉が胸に響く。
先生も、きっと相当痛い思いをしてきているんだろう。
「理解されなくて当然だと思えば、傷も浅い。
その代わり、世の中の普通に合わせる必要もないから
何か言われても無視しとけ。」
実感のこもった言葉に、思わず頷く。
しばらく黙ったあとで、
「行くで。」
と先生が言い、二人は席に戻った。
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