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第三章 兄の気持ち
望さんが大阪に行って、兄さんと会っている。
今日は水族館に行っているらしい。
また楽しそうな写真が送られてきて、カイトは複雑な気持ちだった。
ついこの間までハルカに本気だと言っていたのに
あんなに真剣な顔だったのに
この切り替えの早さは何なんだ!とイライラする。
<こないだ別れたばかりなのに
よくそんなに楽しそうにできるな。>
と、嫌味な返信をしてしまうが
兄は意に介していないようだった。
<望といると楽なんだよな。つらいことが忘れられて。>
その返事を見てカイトはハッとした。
ひょっとして兄さんは、
ハルカを忘れるために望さんを利用しているのか?
そう考え付く。
忘れたふりをしているだけで、
兄さんはハルカを忘れていないんじゃないだろうか。
<ハルカさんのこと、忘れられないんだろ。
何で望さんに会ってるんだよ。>
<アイツは俺の理解者だから、
楽なんだよ。一緒にいると。>
“楽だから”という言葉が何度も出てくる。
そりゃ兄さんは楽だろうさ、とカイトは思った。
想われている側だし。
だけど、好きなほうの側は辛いことだってある。
他の誰かを忘れるために、望さんを利用するなんて・・・・・・
と、なんとも言えない気持ちだった。
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