第九章 待ち伏せ

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第九章 待ち伏せ

改札で待っているカイトの前に 望さんの姿が飛び込んできた。 髪を切った彼女は、写真で見るよりも何倍もキレイで ショートヘアが小さい顔を強調していた。 遠目から見ても目立っている。 なんだか近寄りがたく、改札の前から動けないが 望さんが在来線側の乗換え口に向かおうとしたのを見て カイトは彼女の名を叫んだ。 「望さん!」 「!?」 彼女はカイトに気付き、目を丸くする。 「どうしたの?」 と言いながら、彼女は近づいてきた。 カイトの待つほうの改札から出て来てくれる。 彼が何も言えずに黙ってうつむいていると、 望さんがペットボトルに残っているコーラの残量を見て、 くすっと笑った。 「アキ君から連絡来たのね?迎えに来てくれたの?」 はい、と言いたくて でも声にならなくて、カイトは無言で頭を下げた。 胸が一杯で何も言えない。 「マックでも行く?」 望さんの誘導のままに、駅前のマクドナルドへ入る。 移動の合間、カイトは望さんに先日の失言を謝った。 「あの時はスミマセンでした。俺が馬鹿だったんです。」 「いいよ、別にカイトくんに悪気があったわけじゃないから。」 スッキリさっぱりとした顔だった。 兄さんに会ってきたからだろうか? そう思って彼の胸がまた痛くなった。 望さんは何も知らないから、こんな顔で笑えるんだ。 コーヒーが苦くて飲めないので、マックでもまたコーラを頼んだカイトは 二人がけの席に腰掛けると、 望さんの顔を見つめてそっとため息をついた。
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