記憶売買詐欺

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記憶売買詐欺

 男は事故で亡くしたとある人物の記憶をオークションで競り勝ち、物にした。そのデータを男の脳に上書きすれば、彼の妻子を亡くした忌々しい記憶が消滅される。その上、脳の持ち主だった果報者の思い出が保存される。  これで男も幸せに戻れるはずだった。しかし、男は見事に騙された。男が新たに植え付けられた記憶は、妻子を一時の怒りで衝動的に殺してしまい、遺体を海に放棄し、挙句の果てに自殺したものだった。最後に頭に残ってるのは、極寒の海に入水する場面だった。  男は混乱した。  俺は人を殺した。それが重荷となって自殺を図ったつもりだが、何故か生きている。しかも顔まで変わっている。整形した覚えはない。更には手元にある妻子の写真まで違っている。何がどうなってるんだ。俺はどうすればいいんだ。
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