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「成績少しでも悪くなったら朝練組になれないって、サッカー部の子たちが言ってたから」  点数がやばそうな小テストの時は「結果を誤魔化して欲しい」とヤナちゃんに密かにお願いしに行くサッカー部員がいることを、このときに初めて知った。もちろんそんなお願いは「それはダメです」の一言で却下しているらしい。  「そんなヤツいたのかぁ!」なんておどけられたら良かったけど、「へえ・・・」の一言で終わってしまった。誰かは知らないけど、そんなことをヤナちゃんに頼むヤツがいるなんて。ちょっと羨ましいと思ったオレは多分、作文手直しで頭を使いすぎたんだろう。  ニコニコ笑いながらオレに話しかけてくれるヤナちゃん。もう少し近くにいたい。話したい。 「早く部活行かなきゃね」  ヤナちゃんの一言。別にオレを突き放してるわけでも翻弄しようとしているわけでもないことは分かってる。「もう少しだけ一緒にいたい」なんて、オレだけの感情だ。  ヤナちゃんに軽く会釈して、早歩きで昇降口へと向かう。振り返らなくても分かる。もうヤナちゃんは職員室へと向かっていて、次の仕事の段取りを頭で考えてる。作文書き直しも進んで、こんなふうに作文理由でヤナちゃんと会うのもあと少しで終わる。  それを意識してるのは、オレだけだ。
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