2. LABIRINTO

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  2  イザイアの屋敷から馬に揺られ、家の別邸近くに着いたときには、太陽は中央よりやや西に傾いていた。  視察の間、拠点にしていた屋敷だ。  ジュスティーノは、遠目に正門を眺めた。  アーチ型の門に、簡素な模様の入った黒灰色の門扉。  両脇の門番の待機所の壁も含めて、アイビーの葉が一面に這っていた。  敷地内の庭木が見下ろすように門に掛かり、門の周辺は、影がかかってやや薄暗い。  二週間前に発ったときと、特に変わりはない風景だった。  だが、近付くにつれて違和感を覚え、ジュスティーノは門をじっと見た。  何かがおかしい気がした。  あって当然のものが無いような。  屋敷に馬が近付くにつれ、違和感の正体に気付いていった。  番をしている者が誰も見当たらない。  門番の待機所の窓を見るが、人影がいつまで待っても無い。 「誰かいるか!」  ジュスティーノは門扉の前で声を上げた。  返事はない。 「ジュスティーノ・オルダーニだ! 誰かいるなら開けよ!」  何の返事も無かった。  キ、と音がする。  門扉が風に吹かれ小さく開いたり閉じたりを繰り返した。  開いているのか。  ジュスティーノは困惑した。何という不用心なのだと眉を寄せる。  馬から降り、門を手ずから開けた。  庭を見回すが、人影はない。  何者かの襲撃にでも会ったかと思ったが、庭に荒れた様子は無く、噴水が綺麗な水を吹き出している。  馬を引き、馬屋の方に向かった。  庭が手入れされてない箇所が所々ある気がするが、気のせいか。  通路には、落ちた庭木の葉がいつもより多い気がした。  先程から時折、何かの腐ったような臭いを鼻腔に感じるが、臭いの元を探ろうとするとすぐに消え、どこからの臭いなのか辿ることは出来なかった。  馬屋に近付くと、放された馬が周辺で草を食んでいる。  なぜ放っているのだと、ジュスティーノは馬屋の中を見回した。  眉を寄せ、馬丁はどこだと目で探す。  屋敷から物音一つ聞こえていないのに気付いた。  使用人たちは一体何をしているんだと屋敷の窓を睨み付ける。  主家の人間がいないとなると、いつもこうなのか。  それとも、当主の代理の跡継ぎ息子ということで舐められているのか。  連れていた馬を繋ぐと、ジュスティーノは手袋を外しながら、つかつかと屋敷に向かった。  
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