お見送り

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お見送り

今日もまた一人亡くなりました 呆気ないものです 感覚が麻痺してしまったわけではありません ちゃんと涙は出ます でも送られていく人たちを見ても さみしいとかかなしいとか なにも感情が浮かんでこないんです 亡くなった後は なんて穏やかなんでしょう なんて安らかな空気が流れていくんでしょう 送りに来たひとたちは なにかをやり遂げたような どこか安堵したような表情を浮かべ そこに 土砂降りのような涙が降り注ぐことはなく その場は 雲ひとつない空のように澄み渡り 無温の空気で満たされていきます 黒い車が去った後わたしたちは動き出し 各自の仕事に戻っていくだけです
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