第八章 Restraint

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族長の耳元で囁く青年。 空気を察したのか、リーダー格のトラジャ族の男たちも族長のもとに集まってくる。 その数、十五、六人はいたであろう。 次第にガヤガヤと騒がしくなったと思った瞬間。 不意に族長がその右手に持った槍を頭上に突き上げ、周囲に轟かんばかりの大声を張り上げた。 「キイイイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 一気に飯田たち三人のもとに詰め寄る生贄担当の男たち。 物凄い勢いで三人を、それぞれの梯子の先端に固定するように縛り上げた。 両手、両足はもとより完全に梯子に括り付けられ身動き取れない状態。 首を横に向けることすら叶わない。 完全に自由を奪われた形だ。 鶴見は目をつぶった。 “あの青年の狼狽ぶりは常軌を逸している。何か知ってるんだ……。 恐らくは族長や他のトラジャ族の男たちも。 だが、もう手遅れだ。万事休すだ。あんな芋虫野郎に食われちまうなんて………。” 恐怖が爪先からじわじわと登ってくる。 梯子に固定されているため、恐怖で身体が震えることも出来ない。 三人が三人、自らの ”死“ を観念した瞬間。 男たちがあの巨大なナイフで梯子に縛り付けているロープを切断した。 三人の身体が一気に空中に放り出される。 トラジャ族の狂気に満ちた叫び声が、飯田たちの背中を追い駆ける。 三人とも叫び声を出す力も、もう残っていなかった。 ビューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。 ドスッッ ドスッッ ドスッッ !!!!! 飯田たち三人が、ほぼ同時に巨大蟻地獄に墜落した。
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