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翌朝も昨日と変わらず見事な限りの晴天が広がっていた。
出発前、鶴見と松岡は旅の道中に必要な物資を調達するため村の近くにある出店に向かった。
ありとあらゆる食材が並べられていた。中には日本ではゲテモノに分類されるだろう動物、とりわけ昆虫なども売られていた。
鶴見達がいろいろ吟味しながら選んでいると……、
「ア、アナタタチ、ニホンジンデスカ?」
振り向いた先には、善良そうな一人のインドネシアの青年が立っていた。
「ああ、そうですよ。君は日本語が話せるの?どこかで日本語勉強したの?」
「ハイ、ソウデス。ガクセイノトキ二、ニホンニリュウガクシマシタ。
デモ、マダマダデス。トク二カンジムズカシイ。
トコロデ、アナタタチハスマトラトウニナニシニキマシタカ?」
「ああ、僕たちはもう数が減ってしまっているトラやサイの撮影と調査に来たんだよ。君は野生のトラやサイは見たことあるかな?」
「イイエ、イチドモナイデス。デモミテミタイデス。
ソウイエバ、アナタタチトオナジヨウニトラヤサイノサツエイノヒトタチイマシタ。ココデカイモノシテマシタ。」
「ええ!我々以外にも撮影隊が!?え〜とそれはいつの事?」
「タシカ、ミッカマエデス。ヨーロッパノヒトタチデシタ。ワタシ、エイゴモスコシデキマス。ココデハガイコクジンメズラシイ。マチガイナイデス。ハッキリオボエテマス。」
「………………、ど、どう言う事だ?や、やはりイギリス隊は先に来てたんだ………。」
「え? じゃ、じゃあ、あのガイド達が嘘ついてるってことか? でも、いったい何のために?」
「アノ……。ドウカシマシタカ?ワタシナニカマズイコトイイマシタカ?」
「あ、い、いや、大丈夫だよ。ありがとう。」
「ソウデスカ。デハ、サツエイガンバッテクダサイ。」
その青年の後ろ姿を見送りながら、二人は何も口にする事ができなかった。
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