第八章 Restraint

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「何だ?まだあるのか?! 本当にこれで最後だぞ。言ってみろ!」 青年は明らかに苛立っていた。 だが、 鶴見はそんな青年の様子に御構い無しに予想外の言葉を口にした。 「昨夜、俺は看守役に頼んでトイレのため牢屋の外に出た。 そして、ちょうど用を足そうと立ち止まった時だ。 見たんだ。 巨大な足跡を。 夜間とはいえ看守役の懐中電灯で照らされていたから間違いない。 ざっと見積もっても一メートル近くはあった。 あ、あの足跡はいったい何だ? そんな巨大な足跡をつける生物がこの辺りに生息してるのか? お前たちには何か心当たりがあるんじゃないのか?」 「お、お前、それホントか?!!」 横にいた飯田が驚いて鶴見の方を見やった。 その途端。 青年の顔が明らかに豹変した。 顔面蒼白となり、唇は震えだし狼狽の表情が現れた。 今までの余裕に満ちた態度も嘘のように消え去った。 「なっ、お、お前………、見たのか? それを……。 ほ、本当だろうな……? バ、バカな、そんな訳がない………。 何かの間違いだ。い、いや、待てよ……。で、でも、もしかしたら……。 ま、まさか、そんなことが………。」 青年は途中から下を向き、ウロウロと忙しなく歩き廻りながら自問自答し出したのだ。 青年のあまりの錯乱ぶりに驚きを隠せない鶴見と飯田。 西洋人も言葉は分からずとも、怪訝な表情で青年を見つめている。 だが、青年は鶴見たちの反応などもう眼中には無い様子で頭を抱えながら何かぶつぶつと呟いている。 と、突然青年が後ろで悠然と構えている族長のもとに駆け寄った。
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