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第九章 Appearance
砂地で柔らかかったせいか、ほとんど無傷で墜落した飯田たち。
「ぐっ、ごほっ、ごほごほっ!!」
立ち昇る砂塵が容赦なく三人を襲う。
だが、もっと恐ろしい存在が三人を襲おうと待ち構えている筈だ。
ようやく視界が開けて辺りを見回したが、昨日見た巨大生物の気配はない。
しんと静まり返る巨大蟻地獄内。
下に潜っている筈だ。
そろそろ、現れても…………。
西洋人が耐え切れなくなったのか急斜面の砂地を駆け上がろうとした瞬間。
突然、下から衝撃が襲った。
「ぐっ、ぐわっ! 」
衝撃でもんどりうつ三人。
崖の上からは、延々とトラジャ族の狂気と歓喜に満ちた叫び声が聞こえてくる。
だが、彼らの叫び声など生命の危機に瀕している三人の耳に届くわけもなかった。
次の瞬間。
あの巨大な大顎が砂地から現れたのもつかの間、西洋人の身体を一気に挟み込んだ。
ザスッッ!!
「オオオオオオ〜〜〜〜〜、グアアアアアァァァァァァァァァ〜〜〜〜。」
必死の形相で暴れまくるも、到底パワーで太刀打ちできる訳もなくその強靭な大顎が西洋人の身体を徐々に寸断していく。
「あ、あわわわわわわ〜〜〜〜〜〜。ひ、ひいいいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜。」
戦慄極まる目の前の光景に恐怖で固まる飯田と鶴見。
西洋人の身体から血飛沫が舞う。
飯田たちの顔面にも降り注ぐ。
それを払う余裕すらない。
まさに地獄絵図だ。
ガチンッッ!!
遂に、西洋人の身体が真っ二つに切断された。
ほとばしる大量の血。
だが、まだサイズ的に大きいのであろう。
再び、大顎を開くと下半身を咥え込むと両脚を切断しにかかる。
鶴見はもう既に恐怖のあまり泣きじゃくっていた。
そして、横を見ると飯田が気絶して仰向けに倒れ込んでいたのだ。
細かく切り刻まれていく西洋人の身体。
もう既に、人の原型は留めてはいない。
ただの肉片に成り下がったのだ。
ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ ガツッ
その肉片を貪るように口に運ぶ姿は悍ましいの一言に尽きる。
とてもグロテスクで形容し難いこの場面に、遂には鶴見も気を失いかけた。
その時だ。
地震かと思わせる地響きが鶴見たちを襲った。
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