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かなりの悪路が続いたため、距離的には数キロメートルにもかかわらず、目的地到着前に二日目の日没を迎えることとなってしまった。
だが、もう間も無く日が暮れるという、その時。
ある筈のないモノを、今度は鶴見が見つけたのだ。
腕時計に続いてーーーー、今回は手帳であった。背表紙は本革製の使い込んだかなり大きめの手帳。道すがら、無造作にそれは放置されていた。
そのページを捲ると、案の定そこに書き連ねられた文字は、アルファベットであった。恐らくは調査の際のメモ用に使用したものであろうことは明白であった。
ただ単に、彼らイギリス隊のメンバーが落としただけなのか、それとも彼らの身に何かあったのか……………。
日本人メンバー内は、そんな不穏な空気で包まれた。
この二つ目の落し物?を、彼らガイド達に見せたところで彼らの反応はわかりきっている。
飯田はその手帳を鶴見から預かると、パラパラっとページを捲って一瞥すると、黙って自らのリュックにしまい込んだのだった。
その様子を見ていた崎川が、少し訝しげな表情を崩さず全員に向かって疑問を呈した。
『何だか……、さっきの腕時計にしろ、この手帳にしろさも見つけて下さいと言わんばかりに、妙に目立つところに落ちてませんでした?』
「確かに……、言われてみれば……。何日か放置されていたにしては綺麗すぎるような………。誰かが、意図的にそこに置いたのでは……?」
丸山も崎川の意見に同調した。
「え?でも、いったい誰が、何の為に?どんな得策があって、そんなことをするんです?」
飯田が、少し目を釣り上げながら反論した。
飯田自身も、先ほどガイドたちに食ってかかったことを後悔してはいるものの、まだその時の興奮が冷めやらないのか止めに入った丸山他、他の日本人メンバーに対して表情や口調に攻撃的な雰囲気が感じられた。
ここに来て、日本人メンバーと地元のガイド達との間だけでなく、リーダーである飯田とそれ以外のメンバーとの間で軋轢が生まれつつあった。
ガイドや通訳達はというと、このやり取りの間中、相変わらず日本人メンバーを遠巻きにその冷ややかな眼差しを終始向けていた。
幾ばくかの軋轢とわだかまりを残しつつ、調査隊は目的地手前のポイントでテントを設営し調査二日目の夜を迎えることとなった。
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