第九章 Appearance

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仁王立ちで立ちはだかるその毛むくじゃらの生物は、この世のモノとは思えないほどの容貌であった。 「な、何だ!!あのバケモンは!!」 飯田が上を指差しながら絶叫した。 鶴見の方は全く言葉が出てこず、只々茫然とその姿を目に焼き付けていた。 身体中びっしりと黒褐色の体毛に覆われたその巨体は優に五メートル以上、いや七、八メートルに達するほどの巨大さだ。 全身筋骨隆々のその体躯は想像を絶するパワーを発揮するに違いない。 そして、その容貌たるや、頭骨は前後に長くその鼻先はかなり前方に突出している。 落ち窪んだ双眸に加え、皮膚の色は肌色に近く、かなり彫りの深い顔立ち だ。 暫くすると、その怪物は前屈みになり観察するかの如くその巨大な顔を蟻地獄内に忍ばせてきたのだ。 「グルルルルルウウウウウゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」 凄味を効かせた重低音の唸り声が迫ってくる。 その頭部の大きさだけでも人の五、六倍はある。 僅か数十センチの距離にその醜悪な顔が迫っている。 飯田も鶴見も逃げ場が無い。 ジロリと眼球を動かす仕草までつぶさに観察できるほどだ。 その後信じられないことが起こった。 巨大芋虫が身の危険を感じたのか慌てて、砂の中に潜ろうとした。 だが、次の瞬間。 ガスッッ!! 怪物の豪腕がスルッと伸びると、巨大芋虫を鷲掴みにしたのだ。 狂ったように暴れまくる巨大芋虫。 体表面が粘液で覆われた皮膚は怪物にとっても掴みづらかったのであろう。 スルリと巨大芋虫が怪物の手から逃れた。 だが、怪物がそのまま逃す訳もない。 怪物が跳んだ。 蟻地獄内に飛び降りたのだ。 ズザザザザザザザザーーーーーーーーーー!!!!!!! 辺り一面砂嵐が舞う。 完全に視界ゼロだ。 「ぐあああああ〜〜〜〜〜〜〜、ご、ごほっ!ごほほっ!!」 鶴見も飯田も目や鼻を押さえながら咄嗟に屈んだ。 だが、怪物は鶴見たちのことなど眼中にはないかのように、その両方の豪腕を巨大芋虫に伸ばした。 ガチッッ!!!!
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