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第一章 Departure
『人間蟻地獄』
この言葉を聞いて、いったい何を連想するだろうか?
俺、鶴見 啓介もそんな物がこの世にあるなんて、頭の片隅にもなかった…………。
そう、あの日、あの時まではーーーーーーー。
『ジリリリリ〜〜〜〜〜〜、ジリリリリ〜〜〜〜〜〜。』
半ば、早めの時間に目覚まし時計をセットしたことを後悔しながら、鶴見はベッドから右腕を大きく伸ばした。
「んんん〜〜、ま、まだ4時半か〜、でも、まあ、早めに準備しとくか……。」
まとわりつく毛布をめくり、重い身体を何とかベッドから引きずり出して、定番のホットカフェオレをすすった。
「あ、あち!」
だが、自分の部屋でこうやってカフェオレをすするのもしばらくお預けだろうな……。
ようやく、撮影の日程が決まり海外、イギリスのTV局との共同制作という運びとなり、現地で向こうの撮影クルーと合流する手はずとなっていた。
日本からは五名、イギリスからは三名が加わることとなっており、その中には著名な動物カメラマンの、デイビッド・ブキャナンも参加しており鶴見は会うのを楽しみにしていた。
以前から語学、特に英語に興味があって趣味で英会話教室に通い続けていたのが、役に立つ時が来たのだ。
昨夜のうちにまとめていた荷物の最終チェックを済ませると、鶴見は勢いよくアパートのドアを閉めた。
少し汗ばむ季節になりつつある、五月下旬、初夏ーーーーーー。
鶴見は高まる興奮を抑えつつ、空港に向かったーーーーーー。
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