六、作戦遂行

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 史郎はこの詩を目にして、ワインを飲みたいと思ったのだ。 「あの曼荼羅も良かったけど、この絵もいいな」  ジウが気に入るのも分かる、と史郎はワインを口に運ぶ。  金にしか執着のない史郎が、手放したくないと感じるほど。  蘆屋大成の絵には、美しさや上手さに加えて、独特の吸引力がある。 「きっと、これからさらに名は痴れるのかもしれないな」  頃合いを見て闇オークションに出して、自分が落札し、それをジウの許に参上する計画でいたが、もしかしたら、もっと寝かせて置いてたら、うんと値段が上がるかもしれない。  あの目利きの坊ちゃんが、盗みまで働いたというエピソードもこの絵に箔をつけてくれるだろう。  史郎は、ポケットから、録音機を取り出して、再生した。 〝高宮さんにこう言うんです。『展示会が始まる前に、あなたが寄託した絵をもう一度、しっかり鑑定してみたい』と。そして絵を展示場から絵を持ち出して、そこに強盗が現われ、絵を強奪するという作戦です〟  史郎は清貴の言葉を聞きながら、また肩を震わせて笑う。 「その音声、警察に渡したのではなかったのですか?」  仲間の声に、史郎は振り返る。  そこには、ジ・ルイの姿があった。
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