七、出発の夜

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       2   ――展示会プレオープンの日。  ホテル『天地』の最上階には、たくさんの客が招かれていた。  今回の展示会のために働いた各国の鑑定士をはじめ、ジウ氏と交流のある財界人も集まっている。  頑なに顔を見せていなかった家頭誠司も真相が分かったことで、この会場に姿を見せていた。 「やっぱり、わしは間違うてなかったんや。わしの目はたしかや!」  復活した家頭誠司は、以前よりパワーアップしているように見えた。  隣にいる高宮は、うんうん、と微笑みながら相槌をうっている。 「良かったですね。私もスッキリしました」  側にいた柳原は、「あんなにしょぼくれとってよう言うわ」と肩をすくめていた。  プレオープンの会場を身内にもギリギリまで内密にしていたのは、その日がイーリンの誕生日だったそうだ。  ジウ氏はサプライズで大きな誕生日ケーキを用意し、今回の企画のために世界中を走り回って奮闘したイーリンを労い、誕生日を祝った。 『ありがとうございます。まさかこんなふうに祝ってもらえるなんて、しかもこんな大切な場面で……ありがとうございます』  思わぬ祝福を受けたイーリンに、皆は惜しみない拍手を送った。  不仲だという兄のシュエンも、無表情だが拍手をしていた。  小松の目には、随分と不本意そうに拍手をしているように見えたが、イーリンにとっては、それでも兄に拍手をしてもらえるなんて思っていなかったのだろう。  その姿が嬉しかったようでイーリンは身に付けている真っ赤なドレスと同じくらい顔を赤くさせて、子どものように泣いていた。 『なんだよ、誕生日を祝ってもらったくらいで、馬鹿じゃないか?』  シュエンはぶっきらぼうに言って、目を逸らしている。  その言葉は本心ではなく、素直になれていないだけであることは伝わってきた。  イーリンの誕生日を祝った後、招待客たちは、ワインやシャンパンを片手に展示作品を観て回った。
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