序 章 『まるたけえびすに気を付けて』

2/24
7307人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
       1  ジウ・イーリンが『せっかくだから祇園を観光したいと思って』と礼を言って部屋を出て行き、ほどなくして梶原秋人の『客人』が、小松探偵事務所に訪れた。 「こんにちはっ」  元気いっぱいに声を上げたのは、二人の少女だ。 「おう、待ってたぞ。迷わなかったか?」  そう問う秋人に、二人は「大丈夫です」とにこやかに答える。  小柄なため、『少女』に見えたが、実際には二十歳前後だろうか。 「はじめましてっ」  颯爽と前に出た彼女たちを前に、事務所にいた清貴、葵、円生、小松は、ぽかんとする。 「秋人さんと同じ事務所で後輩の『紅子』です!」  艶やかな黒髪のおかっぱが印象的で、ミステリアスな雰囲気を持つ美女が言う。 「同じく後輩の『桜子』です!」  続けてウェーブヘアのセミロング、童顔で可愛らしい子が、甘ったるい声で挨拶をした。  その後に二人は、サッとポーズを取る。 「二人揃って――『紅桜』です! よろしくお願いいたします」  そう声を揃えた後に、深く頭を下げた。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!