番外編 〜if〜

5/6
前へ
/214ページ
次へ
『……とはいえ、あなたはまだ学生ですし、親御さんが許してくれそうにないですね』 「いいえ」 と、私はホームズさんの言葉を遮った。 「両親を説得します」 きっと、まだ早い、無茶苦茶だと言われるかもしれない。 でも、ホームズさんの言った通り、こんな時代になってしまったからこそ、誰よりも好きな人と一緒にいたい。 家族になりたい。 「きっと、説得できる気がするんです。根拠のない自信なんですが……」 根拠がないと言いつつ、まったくないわけではない。 両親はホームズさんに、絶大な信頼を寄せている。今すぐ私を託しても大丈夫だと思っている節もあり、私たちが会えなくなったことも気にかけてくれている。 真剣にお願いしたら、再び同じような事態になっても、離れ離れになっていることは避けられるかもしれない。 「私も、ホームズさんと家族になりたい。夫婦になりたいです」 『……葵さん』 ホームズさんの声がくぐもっていて、目が赤くなったのが分かった。 きっと涙を堪えている。 こんな彼を抱きしめてあげられないのが、もどかしい。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7403人が本棚に入れています
本棚に追加