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運転席にいたのは、彼女のマネージャーだった。
三人は走り去る車に向かい手を振ってを見送りながら、揃って小首を傾げる。
『なぁ、千穂さん、なんて言ってたんだ?』
『「まるたけえびすに気を付けて」と言ったんです』
『それって、たしか、京都の通り歌?』
『ああ、♪まるたけえびすにおしおいけ♪って歌だ』
三人は、うーん、と首を捻る。
『ま、それより、御金神社に行こうぜ。金ぴかの鳥居に金ぴかの境内、マジでサイコーだから』
『わっ、楽しみです』
『福財布が有名ですよね』
福財布とは、御金神社の境内で売られている評判の財布だ。黄色に近い橙色の布地で、表には『福』の文字、開くと金箔押しの『金』のマークが入ったもの。
そこに、購入した宝くじや証券などを入れておくと良いらしい。
三人は弾んだ足取りで、「御金神社」に向かった。
秋人が言っていた通り、黄金の鳥居、輝くばかりの境内に紅桜は目を輝かせる。
そうしているうちに、彼女の不思議な言葉をすっかり忘れてしまっていた。
だが、とんでもないことが起こってしまったのだ。
それは翌日――今日のことだった。
関係者と家族のたっての希望で今はまだ公にはなっていないが、今朝、宮崎千穂が鴨川の河川敷で亡くなっていたのだ。
今、警察は殺人事件として捜査していらしい──。
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