7376人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「なぁ、ホームズはどう思うんだ?」
「僕の見解も単純なものですよ」
「単純?」
「ええ、紅子さん、桜子さん、そんな単純な見解を聞きたいですか?」
と、清貴は、二人を見る。
えっ、と紅桜の二人は目を瞬かせた。
「監督が何を求めてそんな課題を出したのか僕には分かりません。単純に『正解』を求めているのか、あなた方の『個性』や『感性』を求めているのか……。
クイズの回答者ならさておき、出演する女優に『正解』だけを求めるものでしょうか?
もし監督が求めているものが他にあるとするなら、僕の回答をそのまま伝えるのは逆効果になりますよ?」
清貴の言葉に、紅桜の二人は、ごくりと喉を鳴らす。
しばし黙り込み、二人は顔を見合わせて、うん、と頷いた。
「――私たち、自分で考えた回答を監督にお伝えしようと思います」
「はい。受かっても落ちても、その方が、スッキリしそうですから」
そうですか、と清貴は頷く。
紅子と桜子は、すっくと立ち上がり、
「ありがとうございました!」
と、深々と頭を下げる。
そうして二人は、「早速、マネージャーに報告に行きます」と晴れ晴れとした顔で事務所を出て行った。
「『ホームズさん』ってカッコ良かったね」
「うん、素敵。彼女さんと仲良しで羨ましい」
外からそんな二人の声も聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!