序 章 『まるたけえびすに気を付けて』

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「なぁ、ホームズはどう思うんだ?」 「僕の見解も単純なものですよ」 「単純?」 「ええ、紅子さん、桜子さん、そんな単純な見解を聞きたいですか?」  と、清貴は、二人を見る。  えっ、と紅桜の二人は目を瞬かせた。 「監督が何を求めてそんな課題を出したのか僕には分かりません。単純に『正解』を求めているのか、あなた方の『個性』や『感性』を求めているのか……。  クイズの回答者ならさておき、出演する女優に『正解』だけを求めるものでしょうか?  もし監督が求めているものが他にあるとするなら、僕の回答をそのまま伝えるのは逆効果になりますよ?」  清貴の言葉に、紅桜の二人は、ごくりと喉を鳴らす。  しばし黙り込み、二人は顔を見合わせて、うん、と頷いた。 「――私たち、自分で考えた回答を監督にお伝えしようと思います」 「はい。受かっても落ちても、その方が、スッキリしそうですから」  そうですか、と清貴は頷く。  紅子と桜子は、すっくと立ち上がり、 「ありがとうございました!」  と、深々と頭を下げる。  そうして二人は、「早速、マネージャーに報告に行きます」と晴れ晴れとした顔で事務所を出て行った。 「『ホームズさん』ってカッコ良かったね」 「うん、素敵。彼女さんと仲良しで羨ましい」  外からそんな二人の声も聞こえてきた。
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