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最終章 空へ
所長室を出た二人は、食堂への道を歩く。
東の空には明星が輝き、2つの月が上っていた。
「パク、俺にはあの手紙が呪いに思えてきたぜ」
「そうかも知れない。推薦状を使う機会を得るには、1年以上の戦闘機部隊勤務が必要だしね。使ったら使ったで、もれなくムツクラ教官のご指導を受けることになるし」
コウは声を立てて笑った。
パクの言葉が可笑しかったらしい。
「その前に来月の審査を通らないと、話にもならないだろ」
「そりゃ、そうだ。……でも、あれは招待状だと思う」
特別支援戦闘機隊はエースパイロットばかりが集まる。
そこを目指せ、と言われているのではないだろうか。
「所長は逆に捉えていたんじゃないか。来るな、来たら死ぬぞ、って脅しだと」
ムツクラ教官の真意がどこにあるか、人によって受け止め方が違うのだろう。
パクは空を見上げた。
基礎課程のころ、月に生物がいるかどうかで、コウと議論になったことがある。パクは「いない」派、コウは「いる」派だった。
「実際に行ってみないと、分からないけどね」
「お前は、いつもそれだ。意外と肝が太いからな」
きっと自分で見ないと見えない景色、体験しないと知り得ない知識というものがあるのだ。
パクはそう信じている。
だから一度、王牙に乗ってみたい。
「コウだって、たいして変わらないだろ」
パクは地球に近い方にあると言われている、2番目の月を指さした。
人類が宇宙ロケットを飛ばすようになったら、生物がいるかどうか、この目で確かめに行く。
コウが言い出して、二人が納得した結論だった。
今はまだ、どれもこれもただの夢だ。
それでも求め続ければ、いつかは近づくことが出来るだろう。
空は果てなく広がっているし、パクたちはまだ、飛び始めたばかりなのだから。
(了)
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