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第二章 実戦
ムツクラ教官の声が耳を打った。
「パク・ヤワタ少尉!」
彼は現実に引き戻された。
しばらく呆然と、青空についた一点のシミを見つめていたのだ。
返事をすると、教官は不意に質問をしてきた。
「あの飛竜は、何だ」
ここで質問の意味を問い返したら、怒鳴り飛ばされるだろう。
パクの頭脳はかつてないほどの高速回転を始めた。
求められている回答は、おそらく飛竜の種類だ。
それから類推される行動パターンによって、危険のおよぶ範囲、そしてこれから何をしてくるか? の推測が可能となる。
「高度差があるので、はっきりとは見えませんが、長距離飛行に向いたウミドリ翼形を持つ飛竜と推察します。ならば、長距離単独行の偵察任務を遂行中と考えられます」
「根拠は?」
声は、威圧的だった。
パクは上空の、白鳥座に似た細長い十字の敵影から目を離さずに答える。
「ここはどの辺境からも500海里以上離れていて、空戦向きのハヤブサ型翼形や、地上攻撃用のミミズク型翼形の飛竜が単独で飛行して来るとは考えられません。どこから飛来したかは知りませんが、巣への帰還を考えれば、偵察行動と考えるのが妥当です」
「ヤワタ少尉。我々はまだ何かを断言できるほど、竜族のことを知らない」
教官は歴史か哲学を講義する、大学教授のような口ぶりで告げた。
「だが、いい読みだ。大方そんなところだろう。飛行高度は?」
「1万フィート(3000m)以上、でしょうか」
パクの回答に、返事はなかった。
沈黙に耐えきれず、ムツクラに問いかける。
「見つかっては、いませんよね」
「ヤワタ、この訓練機は何色だ」
「赤地に白のストライプです」
「何でその色にしてあるか、言ってみろ」
「訓練中に墜落、または不時着しても、機体を発見しやすくするためです」
ムツクラは返事をしない。
目立つ塗装の訓練機は、すでに飛竜によって発見され狙われている、と考えるべきだった。
パクの背中を悪寒が走った。
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