KING CALL OK

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KING CALL OK

 辛うじて動く頭を動かして周辺を見回す。  どこを見ても飽和し尽くした財が視界全てを染め上げる。  モグリな商人でもその名を知らないなんてことがないあのイタバッサが居るとはいえ、この財は異常で異様。しかし商人ガケップはそんな考えを抱かなかった。  一商人として、この光景は一つの夢だ。  有り余る財宝を積み上げるこの光景は自分の腕を証明する何よりの証拠であり、結果であり、安堵である。  二つの意味でガケップの目が眩む中、周囲に居た者達が何処からともなく自分の得物を取り出して、かき鳴らし始めた。  金属の壁に反響する大音量。30を超える楽器が響き渡り空気を、全身を震わせる。  「ん~!素晴らしい!さあ、我ら勇敢なる騎士達!今を楽しみなさい!」  そう言いながらエレベスタ……バーリアは音楽に乗ってくるりくるりと回り踊り始めた。 (KING CALLO(Occupied)K(Knight))  作詞・作曲 エレベスタ=バーリア  おぉ風は堅牢の前に無に帰し、天は騎士を焼かず新月が輝く  騎士は黄金の星を時として守り、時として刻み 時として記す  (ラダー) 王より地に降り注ぐ黄金(こがね)の星  (ラダー) 王が散りばめる満天の黄金の星  (ラダー) 王より賜る有り余る黄金の輝きよ  我ら無数の星々に照らされて 無数の星々を束ねて 無数の星々によって生きるもの  黄金が奏でる調べは我らを奮い沸き立たす  我ら悲しき終わりを越えたもの  我ら永き道の初めを越えたもの  我ら星を踏破しその先を征くもの  我らは騎士、王(KingC)より賜った騎士(allOK)  星の先へ征くもの  我らは騎士、王(KingC)より賜った騎士(allOK)  一人も欠くことはない  我らは騎士、王(KingC)より賜った騎士(allOK)  逃亡なんてありはしない  我らは騎士、王(KingC)より賜った騎士(allOK)  その場に居た全員が各々楽器を手に演奏しだし、あるいは踊りだし、一人だけ拘束されたガケップを取り囲むという異様な光景。  音楽も目の前のエレベスタ=バーリア達の踊りも全て一糸乱れぬといった様子。  「一体何を見せられている?ここは一体……なんなんだ?」  ガケップは困惑していた。  《金庫室前》  「レンさんよぉ、放置していたぁ侵入者はぁ始末したのかぁ?」  刑を執行した直後、ニタリが上からズタ袋を引き摺ってやって来た。  「あ、ニタリさん。お疲れっす。そんで有難う御座います。あと、面倒頼んで申し訳ないことしたっす。  警備レベルを変えずに一人だけ侵入させておまけに誘導して金庫前まで連れてくるなんて仕事押し付けたこと、申し訳ないっす。」  「いやぁ、大した事はしてねぇなぁ。強いて謝り所が有るんだとしたら、キリキが退屈してたって話くらいだぁ。」  「じゃぁ後で一杯お菓子持って謝りに行くっす。」  「でぇ、少し聞いても良いかぁ?」  「良いっすよ。何っすか?」  「この奥、或いはこの下、何が在るんだぁ?」  ニタリとキリキは商会の最初を知らない。そして、この下に居る幹部はこの店舗が出来てから一度も外に出していない。故にこの下に誰が居て具体的に何をしているかを知らない。  「『金庫』っすね。そして、モラン商会で一番信頼出来ない一応幹部が居て、他の連中と一緒に金銭管理を任せてるっすよ。」  「信頼出来ないのに金管理任せるなんて、妙なことをさせるもんだぁ。信頼出来ないなんてなんでだぁ?そして、一体何したぁ?」  「そりゃぁ……俺達幹部を金で唆して自分の盗みの罪を擦り付けて殺そうとしたんで、信頼失うっすよ。  なんで、一応商会発足時にその場に居たっすけど、他幹部と違ってアイツは囚われの罪人扱いなんすよ。なんで金庫は監獄も兼ねてるっす。  金銭管理をさせつつ金庫に閉じ込める。これが本当の『金庫刑』ってヤツっすよ。  帳簿にしくじりがあったら首が締まるのは自分の首っすからね。  ……それより、ニタリさんの持ってるその袋って何っすか?」  「……警備の穴は一人分。行きは良い良い帰りは無ぁい。そして、逃げるも無ぁい。だ。」  ズタ袋から毒で硬直した副会長が転げ出てきた。  「ッ!何時の間に⁉」  レンが先程までそこに居た、そして今も居る無口な副会長の頭に掴みかかったが、手がすり抜けた。  「『幻燈』の魔道具を用意していたみたいだぁ。流石、副会長だぁ。」
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