チャプター1 強欲の腕

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【真の世界】。  新たな世界。  七人の人間。  世界の変貌。  そして、神と名乗った光る人影。  立て続けに理解不能な言葉や出来事がこの数分の間に起こったわけだが、不思議と黒時の気持ちは世界が変貌する前と同じように晴れ晴れしい気持ちになっていた。  世界がこのまま人間がいなくなった状態を維持し続けることを、変えることができるのだと知れたのだ。その情報だけでも、黒時の暗い気分を明るくさせたのである。  それに、神と名乗る存在の言葉をそのまま信じるとするならば、この世界には七人の人間がいるわけで、それを思うと黒時の気分は更に明るくなるというものだった。    しかし、明るくなるのはよいが、直面する問題がないわけではない。  というよりも問題だらけで、山積みどころか既に詰んでしまっているような感じでもある。    黒時は、何をすれば良いのか分かっていないのだ。    いや、黒時でなくても分からなかっただろう。それほどまでにあの神を名乗った人影が与えてくれた情報は、少なかった。  黒時は、少々首を傾げる。  まずはどう動くべきか、黙然としたまま考える。  人影が歩いて行く音だけが響き渡る中、思案顔の黒時の耳に届く別の音があった。  その音は次第に鮮明になってきて、どうやら人間の声のようだった。  
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