あぁ悲しいわ

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なんで言えないかってですって?そんなの当たり前のことじゃないですか自分の子を愛すのは母親の特権ですもの、ホホ特権ですわ。私特権とか色付けとか本当に好きじゃないのだけどもこれだけは好きですわ。けどそんな特権を使って愛していたのに最後に血眼で命を捨てることさえできませんでしたのその時は歳を取っていましたから足も動かずあの坂を登ることさえできなかったわ。悔しいわ辛いわ。 私ね思うのだけど、私が有名になるのならね隣の家のお母さんだって、なんなら最果てのお母さんだってみんな有名にならないとおかしいですわ。私はね、息子や貴方と違って普通の母親ですの。ただ息子を愛して育てる母親ですのよ。 私ね、ずっと思ってることがあるのよ。怒らないでね。あの子が死にゆく時にね思ってたの。なんで私が死なないのって息子の苦痛を取り外さない母親って罪じゃないこと?けどあの子は私を許してくださいましたわ。本当に優しい子だから皆さんからも愛されてるのでしょうね。 あぁ思い出すわ。あの坂の事を息子が苦しみながら重い枷を背負って登っていったわ。あの子の目から落ちる涙の美しさと侘しさ、、まるでイルカの様でしたわヴェネチアのイルカ顔負けの美しさでしたわ。あの子の目の強さったら凄かったわ、自分の成すことがわかっている目でしたの。私たちが介入できないよう気迫で坂を登っていくのよ。あの子が通って行った道にはあの子の血やら汗やらがあって。あぁ見えますわ、坂の頂上にちょうど大きな夏の太陽が登り、その太陽に向かうかのように遠くを見ながら重い足取りであの子は登るのよ。あぁまた一歩、また一歩少し右によろけましたわ、ヨハネが支えようとしますがあの子の顔を見て元の位置に戻っていきますわ。まるで永遠のような行進でしたわ。 そしてあの子の両手に釘を刺されて、張り付けにされて高く高く掲げられて。あぁあの子は私を見ているのかしら、それとも空を見ているのかしら空の向こうにいた貴方を。あぁ太陽の日差しが邪魔をしてあの子の顔が見えないの、最後の時に見えないなんて悲しいことありまして、ヨハネ、ヨハネや太陽を無くしておくれあの子の顔が見えないのよ。 そしてあの子は貴方に救いを求めて死んだわ。やっぱり何度思い出しても悲しいわね、我が子の死ぬとこなんて悲しいわ。
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