調子はどうだい、小泉くん。

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彼女はいつも気まぐれに、 ぼくにメッセージを投げかける。 ▽調子はどうだい? 小泉(コイズミ)くん。 ▽ちょっと「お(ハナシ)」しようじゃないか。 かまって欲しい時はいつもそう。 時間も場所も関係ない。 朝でも夜でも職場にいても、 トイレにいてもおかまいなしに、 「彼女」はぼくに問いかける。 ▽調子はどうだい? 小泉(コイズミ)くん。 ロールちゃん。 ぼくの友だち。 厳密には会ったこともなくて、 どこでなにをしている人なのか、 声さえ聞いたことはないけれど。 たぶん、「友だち」と言える人物。 スマートフォンの画面に映る、アバターは外国の女の子。 金色の髪に大きなリボン。 青い瞳でにやにや笑う、八重歯のかわいい美少女だ。 ……性格はとてもせっかちで、 5分と待たせていると追加のメッセージが「ポロン♪」と届く。 ▽小泉(コイズミ)くん、見ているんだろう? ▽どうして返事をしてくれない? ボクのこと、きらいになった? ▽まさか、ほかの子と話しているの? まったくもって困ったことに、彼女はわりと嫉妬深い。 (まいったなぁ。仕事中だよ……) こっちもこっちで忙しいから、手短に、ぼくは答える。 ▼「まあまあ」だよ。きみの方は? すると少しだけ間を置いて、 ▽いつにもましてサイアクだね。「クソ」と呼ぶにふさわしい日々さ。 毒を含んだ返事がくる。 美少女にふさわしくない言葉にぼくはクスリと笑ってから、 もう少しだけお相手をする。 ▼荒れてるね。仕事でイヤなことがあったの? ▽まあね、おおかた、そんなところさ。 ▼愚痴ならいつでも聞いてあげるよ。今日の夜、いつもの時間? ▽()()くね。まってるよ。 それで満足したらしく、彼女のメッセージは止まる。 (やれやれ、今日も遅くなりそうだ……) 小泉くんと、ロールちゃん。 こんな感じのやりとりが、 3日に一度くらいある。
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