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道にある蛍光灯は消えかけているのではなく完全に点いていない。薄汚れているそこには飛んでいる蛾が集まりもしない。
懐中電灯を照らして進む道の両脇は正に森といったもので、管理されていない草木が生い茂っている。
いよいよ、電柱も無くなってきた道を進むと目的地が見えてきた。山奥にある廃墟、メールに書かれていた場所が本当にあった。
元々は近くの畑でも管理しているお年寄りが住んでいた風に見える建物は、古き良き日本家屋で窓も屋根も欠けている。二階建てでそれなりに大きな家屋には開いている玄関から見える内部にも草が生えていた。こんな絵に描いたような心霊屋敷が実在していたなんてと男は第一印象で思った。
恐れることは一切なく足を踏み入れる男。玄関に張られていた蜘蛛の巣は素手で取り払った。
いきなり何か人じゃない者がいて、即死でも本望。本物の霊に殺されるなら喜ばしいと思えることだった。
ギシギシと音がする廊下を進めば嗅いだことのない異臭がして、近くの和室を除けば、女が血の染みた畳の上に倒れていた――。
人としての形が残っているので、たぶん死んでからそれほど日にちは経っていないと思う。普通の人なら恐怖で腰を抜かしてしまいそうな光景だが、男はむしろ自分と同じ境遇の人間がいてなんだか安心した。
動き出して、自分を殺してはくれないかと心の中で頼んでみたが女の死体はただ寝転んでいるだけだった。
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