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神殿へと続く道を行く見習い神官が一人。彼はまだほんの少年だが、その相貌には確固たる信念が宿っていた。
どうしても、神の御前で乞い願いたい事がある。
少年がこの道を行くのは初めてではない。聖職者になるべく学ぶ者は、神の座する山、神山デオテウスの頂上に据えられた神殿へと入門の儀を執り行うために連れられる。
まさに今、彼が進む道だ。幼き者が歩くには少々険しい道のり、かつては御輿にて運んでもらえたが、悪路に揺られ続けなければならないのもなかなか険しい試練である。
しかし、儀式ために神の御前へと出向くのは習わし。聖職者ならば、だれもが一度は通る道だ。
そのときのわずかな記憶を手繰り寄せつつ、少年は輿の窓から見た景色をなぞらえて山道を進むのだった。
少年はなぜ、神殿を目指すのか。それは彼に課せられた運命が関わっている。
見習いの神官として学び、神殿に使えてはいるがそれは仮の身分。
勇者の末裔として生まれた運命を背負う彼は、いずれ世界に旅立たなけらばならない。それが少年に定められた道だった。
教会での努めや学び、鍛錬のすべては、この運命のため。魔王を封印するための”勇者の証”を求めて旅立つ時のための準備でしかない。
最初に魔王を討伐した勇者は、魔王を封じる力を”証”とし、末裔に託した。
勇者が魔王の封印を守ることにより、この国の和平が保たれている。
彼らは、勇者の血が途絶えぬよう、すべての子孫に勇者の役割を継承しため、後に勇者の末裔は膨大に増えてしまった。
そこで国は考えた。それぞれの勇者の末裔の家から一人ずつ、候補者を旅立たせ、一番初めに”勇者の証”を国王に示したものをその代の勇者とし、次の勇者に交代するまでの間、魔王の封印を管理を任せるというものだ。
剣技を磨くもの、魔術を学ぶもの、勇者の末裔の家門はそれぞれの信じる方法で勇者となりえる力を蓄えている。少年の生まれた家では、魔の力に対抗しうる力、神の加護を受けるべく神道へ仕える、という方法を選んできた家系だった。
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