第五章

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「我々人類がこの島で進化する間に、外の世界では再び陸地が生まれた。我々は青き大きな水――海を越えて、新しき陸地を目指さなければならない。それには舟が必要だ。舟とは水に浮かんで進む乗り物で、たくさんの人を運ぶことができる」  セリの喉の奥に笑いがこみあげた。辻落語でもそんな法螺話は聞いたことがない。 「そんな大きなものを……水の上に……いったいどれだけの浮き袋が要るってんだ……しかも人間が……その上に、たくさん……? はは、はははははは」  セリはひとしきり笑った。貝爺はそんなセリにかまわず、続けた。 「舟を作るには木が必要だ。ところが今われわれの陸地には木が生えていない。陸地の先端まで行きなさい。そこに流木の流れ着く浜がある。流木を集めて舟を作るのだ」  とつぜん、セリの脳裏に、舟のイメージがありありと浮かんだ。  青き大きな水。  湖よりもはるかに深く、はるかに広い。  その表面を、木の葉のように揺られながら進む、一艘の舟。 「あたしは……舟を作るのか……」
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