第六章

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「なんでわかるんだ」 「ハシさんから手紙がきたから」 「へえ。郵便制度も大分よくなったんだな。……やつらは、どうなった」  言ってしまってから、「やつら」がレンの親戚であることを思い出した。  レンは眉ひとつ動かさず答えた。 「……伯父さんは、適切な応急処置をされて、自分の家の前に寝かされていた。おば……邑長は、それを知らずにハシさんの家を襲ったみたいなんだ。……ふたりは裁判の結果、邑を追放になった」  セリは、レンの顔を見た。本当に成長したな、と思う。まなざしに力がある。 「ラキを呼んでくるよ」  そう言ってレンは席を立ち、部屋を出た。ほどなくその扉が勢いよく開いて、ばたばたと足音が聞こえた。 「セリ!」  殺風景な部屋が、一気に色づいたと思われた。  風のように飛び込んできたのは、ため息が出るほどの美少女だった。 「ラキ……きれいになったなあ」  セリが思わずそう呟くと、ラキは駆け寄ってきた。セリは立ち上がって少女を抱きとめた。 「ごめんなさい……私のせいで……私がつかまらなければ、こんなことにはならなかったのに」 「何言ってるんだよ、いちばん辛い思いをしたのはラキじゃないか」  セリがそう言うと、ラキは涙に濡れた顔を上げて、長い睫毛の下からセリを見つめた。 「ちょっと……旦那が妬いてるよ」  セリは妙な気分になり、ラキをそっと押しやった。 「あーあ。その辺の話はふたりでやってくれ。あたしは出かけてくる」  レンはその言葉を聞き逃さなかった。 「なに言ってるの? だめだよ、シザが帰ってくるまで待ってなきゃ」 「待つのはキライなんだ、知ってるだろ」  セリは片目を瞑ってみせた。
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