第三章

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 セリはこれまでのことを話した。湖に落ちたレンを助けたこと、謎の老潜人のこと、邑長の依頼のこと、三日の期限のこと。そして、十三年前に起こった悲劇と、ハシが考えている邑長とその息子の企みのこと、老潜人はじつは十三年前にいなくなったハシの父親で、ハシは周囲にはその存在を隠していること。油井については、油脈が涸れていることがわかったので、油井設備の測量と新しい油脈の調査だけをして、あとは潜水隊に引き継ぐつもりでいたが、つい先ほど、人手がなくても櫓を別の油脈の上に移動して油井を掘削できる方法があることに気がついたので、残り一日半でそれを試したいと思っていること。  話し終えてセリは、思いがけなく心が軽くなっていることに気づいた。見知らぬこの土地で、いま自分が一番心を許せる相手が、あれだけいけすかないと感じていたこの男であることが不思議だった。  シザは抑揚のない声で言った。 「つまりきみは、命を狙われている可能性があると知りながら、その状況から抜け出す手立てを考えずに平然としていたわけか」 「だけどそれは、ハシだけが言ってることなんだ。証拠は何もないし、あたしにはとうてい信じられない。それよりも、あたしはこの櫓のことをもっと知りたいんだ。そして、それを作った人と……話をしてみたい」  だがそれは、いまとなっては叶わぬ願いだ。  いきなり、目の覚めるような衝撃を感じた。セリは頬を押さえて目を見張った。 「何するんだ!」  セリは激昂した。頭に血が上って、平手打ちされた頬がちくちくした。 「潜水作業で、第一番目の優先事項は何だ?」  シザは、口頭試問の試験官のような口調でたずねた。  セリは怒りと悔しさで涙が出そうになった。なぜ潜水歴六年のこのあたしが、こんな幼稚な質問を、こんなところでこの男にされなければならないのか。 「……自分の身の安全を確保すること」  歯のあいだから押し出すように答えた。
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