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この男にしては、表情がずいぶん柔らかくなっている。初対面の者には決してわからないだろうが。
レンは硬い表情でシザの手を見ていた。どうしたらいいのかわからないのかもしれないと思って、セリはレンの手をとってそこへ導いた。前にレンがしてくれたのと同じように。
レンは力なくシザの手に触れて、すぐに離した。そして低い声で、レンです、と言った。
三人は同じ方向へ歩き出した。誰も喋らない。セリは耐えられずに口を開いた。
「そうだ、今日はラキのところでごはんを食べる約束をしているんだ。レンも来るだろ」
「行かない。用事があるんだ」
「あ、そうか。親戚の誕生日とか言ってたよな。悪いな、忙しいのに毎日つき合わせちゃって」
「ううん」
それから、レンの家のほうへ行く曲がり角まで、誰もひと言も喋らなかった。レンはちょっと手を上げて無理に笑って、そして走っていった。
シザはその場で永久煙管を取り出して大きく吸い込み、上を向いて長く吐いてからこう言った。
「可愛い助手じゃないか」
セリは、あんたは可愛くないけどなと叫んで、そのすまし面をぶっ飛ばしてやりたかった。
セリは邑長の家から荷物を引き上げた。邑長には、寝場所を移すが仕事は約束どおり明日までやる、と告げた。どこへ移るのかと聞かれたので、お宮の近くに天幕を張るつもりだと言った。邑長はそれを承諾したので、ついでにシザの天幕を同じ場所に張る許可も得た。
セリは馬に荷物を積み、シザとともにハシの家に向かった。シザも、邑はずれにつないでいた自分の馬を引いてきた。
兄妹はふたりを歓迎した。
「食材持参って約束したけど、採る暇がなかったんだ。前借りしていいかな」
セリが申し訳なさそうに言うと、ラキは、いいのよそんなの、だってもう作ってあるもの、と歌うように言った。
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