第三章

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「作業中に事故にあい、酸素不足で脳をやられてしまった。見知らぬ土地に打ち上げられ、何年もさまよったあげく、かすかに残っていた記憶を頼りに故郷の邑に帰ってきた。簡単に説明がつく……さ、できたぞ」  シザは無理やりセリの話に決着をつけ、鎧の左足を床に置いた。シザとセリのあいだには、油を注され、きれいに磨かれた鎧の各部分が、完成型に並べられていた。  セリははぐらかされたような形になったが、美しくよみがえった鎧を見た喜びのほうが勝った。寝転がって頬ずりしたい気分になった。 「私がいなかったら、自分で整備するつもりだったのか」 「当然だ」  セリはうっとりと鎧を眺めた。  シザはため息をついて立ち上がった。 「きみはたしかにとても優秀だ。だが、自信を持つことと、うぬぼれることは全然違うぞ。何ができて、何ができないか、きみは自分でよくわかっているはずだ」 「ああ。あんたの言うとおりかもな」  セリはあっさり認めた。シザの表情が少し動いた。 「反発すると思っただろ」 「む」  セリはにんまりした。 「そうそう思い通りになるものか」  シザは一度、ゆっくりとまばたきした。 「きみの言動は予測がつかないな。そこが……」  といいかけて、口をつぐんだ。 「そこが、何だ?」  悪口を言われると思ったので、セリは声を低くした。 「何でもない。おやすみ」  シザは、あっさりと扉を開けて、出て行った。  拍子抜けしたセリは、見えなくなった背中にぶつけるように、おやすみ、と応えた。
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