第三章

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 翌朝、夜明けとともにセリとシザは湖へ向かった。今日も天気はよさそうだ。セリが邑へ来てからは、ずっと快晴続きだった。  この天気と同じく、朝一番のセリの気持ちは、これ以上ないほど晴れやかだった。  昨日、四枚の羽をはずされた櫓は、四角錐に近い構造美をより強調し、荘厳とも言える姿を朝日にさらしていた。  工事の手順はすべて、ばっちり頭の中に入っている。  今日の現場監督はセリなので、岸での準備体操のあと、概要を説明した。昨日までと違い、すべて潜水隊方式にのっとってすすめることに昨夜決めた。シザは休めの姿勢で聞いている。 「本日の予定は六本。一本、湖上部分汲み上げ機構の解体、および浮橋と作業場の解除。二本、潜水、ケーシング管の解体。三本、潜水、櫓の移動。四本、潜水、ケーシング管を含む湖中部分掘削機構の設置。五本、浮橋と作業場の設置。六本、湖上部分掘削機構と羽の設置、およびそれらの試運転。三本目と四本目のあいだに一刻休憩を入れる。工程は必要に応じて入れ替える。以上概要説明終わり。一連の作業に先立ち、これより鎧の試用を行う」  それから、道具を持って浮橋を渡った。  セリはうきうきとした気分で鎧を組み立てた。  浮橋の縁に作業手をしっかり固定してから肩の留め具をはずして上部を後ろへ倒し、胴体部分に身体を入れた。  鎧の中で虚に入り、作業手の固定を解除して降下する。  シザは湖面すれすれで待機し、喉歌を交わしながら、常にセリを引き上げられる体勢をとる。  しばらく湖底で歩き回ったり、石を拾い上げてみたりしたのち、セリは引き上げの合図をした。  浮上したセリは浮橋に作業手を固定し、腕を引き抜いて内側から留め具をはずして開口し、潜面を引き剥がすと、大きくため息をついた。 「最悪だ」地を這うような重い声。 「箇所は?」シザはすぐ隣で浮橋にとりついている。 「頭の上」 「どんな具合だ?」
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