第三章

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「きみの助手が仕事をしたそうにしているぞ」 シザが、近くなった岸を指した。  セリはそちらを見た。  手を伸ばして振ると、少年も懸命に振り返した。 「シザ……先に、浮橋をつけていいかな」 「了解」  シザは空へ向けて煙を吐いた。  セリは浮きの端を持って岸まで泳いだ。レンがうれしそうに駆け寄ってくる。  いま橋をつけるから渡って来いよ、とセリが言うと、小躍りせんばかりに喜んだ。  セリがつけたばかりの浮橋を渡ってきたレンは、真剣な顔でシザを見上げた。 「ぼくに出来ることがあればお手伝いします。邪魔なら……帰ります」  シザは無表情のまま、セリのほうへ頭を傾けた。 「今日の現場監督は彼女だ。彼女に訊くがいい」  レンがセリに視線を向けると、彼女は頭を掻いた。 「えっと……そうだな。昨日と同じようにまず……」  セリの指示を、レンは一言も漏らすまいと真剣に聞いた。  シザが制動装置をはずすと、風車は力強く回りだした。付け替えられたシャフトが歯車を経由して、なめらかに動いている。  青い空をバックに大きな羽根がゆったりと回るさまは、なかなか壮観だった。 「ベークが硬化するまで、帆はたたんでおいたほうがいいだろう」  シザの表情は清々しい。 「あとはレンがやってくれるさ」  セリは頼もしげにレンを見た。
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