第三章

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 変なやつ、と言いかけて飲み込んだ。それよりも、言わなければならないことがあることに気づいたのだ。 「あんたがいなかったら、今回の仕事はできなかった。感謝してる」  シザは、はじめてセリを見た。  そして、ふっ、と息を吐いた。セリが見たことのない表情だった。 「その言葉は、無事に都に到着するまで受け取らないでおこう。だが、気持ちだけはありがたく受け取っておく。では、おやすみ」  シザは天幕のほうへ歩み去った。  素直じゃねーな、とセリは呟いた。    翌朝、暗いうちにふたりは出発した。  セリは差し出されたラキの手を握り締め、シザは丁重に最敬礼で応じた。  馬を走らせるにつれ、セリの中に違和感が湧いてきた。  最初の難所である竜骨峠に差し掛かる手前で、違和感は最大になった。 「そうか!」  突然セリは叫んだ。 「どうした」 「シザ、あたしは戻る」 「どうした、忘れ物か」 「ああ。とんでもない忘れ物だ」  言うがはやいか、セリは馬を反対方向へ向けて走り出した。
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