第四章

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 レンが小刻みに揺れる瞳でシザを見つめている。彼はラキの頭を自分の膝に乗せていた。 「震えてるんです。どうしたらいいの」  そう訴えるレン自身が震えている。  シザはラキの横にひざまずいて、呼吸を確認した。 「頭は低くしたほうがいい。横を向かせて」  すでにハシの着物が二枚かけられていたので、シザはそのうちの一枚をとなりの地面に敷き、そちらへラキをそっと移し、上からもう一枚をかけた。これで多少は暖かくなるはずだ。  レンはシザを手伝うあいだ、口をぎゅっと結んでいた。  作業が終わると、シザの顔を見てささやいた。 「セリは、どこへ行ったの?」  シザは、今しがた見た光景と、自分の確信を思い出した。 「彼女は戻る」  いつかはわからないが、いつか、必ず。 「すべて終わるまでは希望を持ち続けろ。きみがしっかりしなくてどうする」  レンは、目にいっぱい涙をため、震えながら口で息をした。それから、噛み切るのではないかと思うほど下唇をかみしめ、目をかたく瞑って、ひざの上で拳を握り締めた。そして、一度深呼吸すると、目を開け、シザを見据えてうなずいた。  シザも無言で、だが力強くうなずき返した。  レンは再び、ラキを見下ろした。顔色は貝殻のように白く、奥歯が小刻みに鳴るかすかな音が聞こえる。 「油があれば」  シザは呟いて、洞窟の奥へ行った。  そこには、老人がいたと思われる平らな場所があり、汚れた食器が二三個、転がっていた。他に生活感のあるものは全くない。  シザは、その横の岩壁に注目した。あきらかに凹凸の感じが不自然な箇所がある。彼は腰嚢から潜人灯を取り出してその部分を照らした。  光を当てると、すぐにゆがんだ円形の継ぎ目があるのがわかった。  シザは振り返った。 「レン、ハシさんを呼んできてくれ」
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