第四章

15/18
前へ
/122ページ
次へ
 ふらふらとやってきたハシに、シザは努めて普通の調子で話しかけた。 「この継ぎ目は何だか知っていますか?」 「まったくわかりません。そんなものがあるなんて、いま知りました」  シザがさらによく見ると、円の真ん中に手をかけるような深い窪みがあった。  彼はそこに手をかけて、力を入れて引いた。  岩は案外あっさりとはずれ、大人がひとり這って通れるぐらいの穴があらわれた。  油のにおいが、つんと鼻をついた。  念のために、いまはずした岩の蓋の裏を調べてみると、たくさんの石をベークライトでつなぎ合わせたものだった。  シザは穴の中に上半身だけ入れた。せまいところは胴の長さぐらいで、その先は広くなっている。潜人灯をかざしたが、空間が広すぎて光が届かないようだった。彼はいったん身体を戻し、手近な石を拾って穴の中へ投げ込んだ。音は何も聞こえなかった。シザはふたりに向かって言った。 「中を見てくる。……レン」 「はい」 「地上の様子を見てきてくれないか。……連中が我々をしつこく探しているようだと、ここに隠れて対策を考えなければならない。ただし、くれぐれも気をつけろ」 「はい」 「ハシさんはここで、妹さんを見ていてください。なにか変わったことがあれば、すぐに呼んでください」 「わかりました」  シザは中へ入った。  隘路から身体を引き抜くと、立てるほどの広さがあった。  潜人灯をかざしながら、注意してすすんでいく。  油のにおいは、ますますきつくなった。  地面は奥へ向かってゆるやかに傾斜している。  光量が落ちてきたので、シザは潜人灯をもう一度振った。  地面が濡れている。  その液体に指を触れてみると、油だった。ただし、普通の油よりもにおいが薄く、粘り気が少ない感じがする。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加