第四章

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 男が叫んだあとの動きは見なかった。ひとりで追って来るだろうか。それとも、仲間を呼びに行くのだろうか。  レンは梯子を降りると急いでそれをはずし、洞窟の中へ駆け込んだ。  ラキの横にいるハシが振り向いた。 「見つかった! あの人たち、こっちへ来ます! シザさんは?」 「まだ出てこない」 「ラキだけでも、中へ入れて隠さないと」  ふたりはラキを慎重に持ち上げて、狭い穴から奥へ運び入れた。  足の方を持っていたレンが、完全にラキの身体が奥の空洞へ入ったと確認したとき、入り口のほうで複数の声が聞こえた。  レンはいそいで、梯子をつかんで、あとずさりする形で足から穴に入った。  男たちが、走ってこちらへやってくる。その中には松明を持っている者もいる。  光のあるほうから暗いところを見るのと違って、中から外はよく見える。  レンは、間近に迫ってきた男の足に向けて、梯子を突き出した。男があわてて飛びのく。  そうやって戦おうというはっきりした考えがあって持ってきたわけではなかったが、こういう使い方で、とりあえず防御の効果はあるようだ。レンは梯子をめちゃくちゃに突き出した。向こうの男は、踊るようにぴょんぴょん飛び跳ねながら、梯子を捕まえようとしている。が、足元で動くものをつかむのは意外と難しいようだ。レンは後ろに下がって、梯子を突き出したときに穴から飛び出し、引っ込めたときには穴の中に入るように調整した。そのほうが、よりつかまれにくいと思ったのだ。  だが、いつまでもこんなことを続けるわけにはいかない。  後ろでは、ハシがシザの名を何度も呼んでいた。  シザの返事は聞こえてこなかった。
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