第四章

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 レンの梯子攻撃で、追っ手の男たちは容易に穴に近づけなかった。  しばらくして梯子が出なくなってからも、まだ用心していた。  そのうちやっと、さっきレンの攻撃を受けていた男が穴の端に近づいて、おそるおそる中を覗き、振り返って叫んだ。 「油のにおいがするぞ!」  男たちはしんとした。  先ほど彼らは、ハシの家に火をかけた。しかし、中には誰もいないとわかっていたからできたのである。いま、この空洞の中には人がいる。油気のある、ほんの小さな出入り口しかない地下の空洞に火をかけたらどうなるか。  そのとき、人垣を押しのけて前のほうへやってきた者があった。  邑長だった。  彼女は先頭の者の松明を奪い取り、穴からひきはがすやいなや、その松明を勢いよく中へ投げ込んだ。  火は一瞬にして燃え広がり、洞窟の中に妖しくゆらめく影絵の劇場を現出せしめた。
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