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何もいらない
保育園の読書時間で教室にある本棚から絵本を選んでいた。一番仲良しだった界くんは身長が一番高くていつも高いところにある本を取ってくれた。
「界くん、青い絵本とって!」
その日も絵本を取ってくれて、界くんが本を抜いた瞬間に本棚に並べてられていた本が落ちてきた。僕は界くんが倒れているのをただただ泣きながら見ていることしかできなかった。界くんは小さな傷で済んだけれど幼かった僕は界くんの倒れた姿がトラウマになって、罪悪感から界くんと話すのが怖くて界くんから離れるようになった。
高校生。6月。
「陽太、誕生日また欲しいものないの?」
「うん。何もいらないよ」
あれから十年たった今でも欲しいものがあっても心のどこかで言うと誰かを傷つけてしまう。そう思ってしまって言うのが怖い。そうやって抑えるのにも慣れてしまって欲しいものすら無くなっていった。
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