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友達
家について蓮くんが僕の代わりに親に事情を話してくれた。親は蓮くんに深い感謝をし、家に入るといつものように接してくれた。
「これからあまり一人で帰らないようにしなさい」
「うん」
朝起きていつものように学校に向かった。今日からは折り畳み傘を毎日持っていくことにした。教室に入り、席に着く。根暗な僕はクラスにも友達はおらず、耳に入ってきた僕の印象は空気らしい。僕自身も目立ったりするのは嫌なので空気なくらいがちょうどいいと思っている。いや、空気であってほしい。「蓮くんだー、どうしたの?」
女子が教室のドアに集まっていた。
「うん、陽太ってもう来てる?」
「え…来てるけど…」
なんで僕なんだとわかりやすい反応だった。僕も同感だ。
「陽太ー、こっち来て」
蓮くんがこっちを見て呼ぶ。立ち上がって蓮くんのところに行った。
「ど…どうしたの…?」
「ちょっと、二人になるとこ行こうか」
周りの女子に来るなと言っているかのようないいようだった。蓮くんについて行き屋上にたどり着いた。
「なにか、話が…あるの?」
「昨日どうだった?ちゃんと眠れた?」
「うん…」
「そっか、よかった」
ぎこちない静かな空気が流れる。少し気まずかった。
「親御さん、何か言ってた?」
「あ…一人で帰るなって、」
「じゃあ、今日から一緒に帰ろうか」
「え、でも…」
「でも?」
「蓮くんは、その…お友達と帰ったり…しないの?」
「陽太は友達じゃないの?」
友達と言われてピンとこなかった。
「ともだ…ち?」
「そ、友達」
「わかんない」
「もー、友達だよ」
「うん…」
「嬉しくない?」
「嬉しい。友達…できたの、初めて」
友達が何かはよくわからなかったけれども嬉しかった。
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