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車はダムを右側に見ながら山道を進む。青緑色の雄大な水面。ガタガタの細道。かなりの山奥だ。こんなところに人家があるとは思えない。そう思っていた。すると、ふと壊れかけのようなトタン屋根の古びた平屋があった。木々のせいで昼間なのにちょっと薄暗い。
「お姉ちゃん、ここだ!」
「えっ?」
「停めて!」
ハザードを出して車を出来るだけ左に寄せる。道は狭くて車が如何にかすれ違うことが出来るくらいの道幅しかない。おんぼろの平屋は壁が朽ちかけている。木で出来たドアは半分開いていて、中の様子が窺えそうだったが、怖くてそんな度胸はない。その時、風が強く吹いて山野さんの家の周りにある木が不気味に動いた。私は悪寒がして鳥肌がたつ。家の横には枯れている雑草が積み重なっている。その脇にブロック塀で出来ている四角い囲いがあった。
「あ、お墓」
妹が小さく叫ぶ。ブロック塀の中、小さな敷地に墓場があった。墓石は6つ
『山野家』『山野家』『山野家』『山野家』『山野家』『山野家』
4つが大きくて2つは小さい。噂は本当だったんだ。その時、人影がサッと動いた。こんな場所、しかもお墓の中に人がいるわけがない。目をこらして見てみると真っ白い顔が6つ、薄暗がりの中に浮かんでいる。目の錯覚か?
うわあああああああああ。私は叫びだしたくなった。
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